横浜市立平沼小学校は、横浜駅を学区にもつ商業地域にある学校です。学校近くには公園はいくつかあものの、子供たちが自然と親しむといった環境はほとんどありません。また、学校敷地内では、運動場と学級栽培用花壇を確保するのが精いっぱいで、メダカ池や野草園(雑草園)を作るところさえない状況です。
子供たちも、「自然」はどこか遠くにあるものと思っているようで、身近なところで虫を採ったり、魚を釣ったりすることはありません。
しかし、プール清掃の時には多くのヤゴを採ることができますし、花壇の花や野菜には害虫(ニジュウホシテントウ、…)がつきます。ですから、環境さえ整えれば、多くの生き物を呼び込めるのではないかと考えました。
一週間後には、ミジンコなどの微小生物が発生していることが確認できました。
また、ガマやミゾソバにはアブラムシが発生していました。すると、それを捕食するナナホシテントウがやってきて産卵したようで、幼虫の姿が見られるようになりました。そのうちに、成長し羽化していきました。もちろん、アキアカネも羽化して飛び立っていきました。
小さな水槽でも生き物を呼び込めることが確認できたので、学校敷地内で残された空間としての屋上を緑化すれば、子供に身近な自然環境を提供することが出来るのではないかと考え以下の方法で実践してみました。
120cm×80cmのコンクリートパレット2枚と80cm×200cmの木枠2つをL字形に配置しました。コンクリートパレットの縁から木枠を覆うようにブルーシートをかぶせ、木枠に側には水がたまらないようブルーシートにビニールパイプを刺し水抜きとしました。
土は、ハマソイル(汚泥を焼き固めたもの・横浜市下水道局提供)を底に敷き、そのうえに砂を重ね、さらに赤玉土を練ったもの、黒土を練ったものを張り付けていきました。(図2)
コンクリートパレットには、水生生物が生きられる環境を作り、木枠の側は、乾地生生物が生きられる環境を作ることをねらっています。
また、二つの入れ物がただ隣り合って置いてあるだけでなく、土で二つの入れ物をつないで、コンクリートパレットの水が木枠の方に送られるようにもしました。
屋上は、乾燥しやすく雨水以外の水の供給が受けられないので、水道とコンセントを設置し、乾燥しすぎるような場合には、水遣りができるようにしました。
作業は、科学クラブの活動として、10月17日と24日の2回をかけて行ないました。
10月末の作業となったため、97年2月中旬までには、水生生物の姿は見られませんでした。また、植物についても、土にまじった種子が発芽した程度でした。コンクリートパレットの水は、カラス、スズメ、キジバトなどの水場となっています。
現在(97年2月)、子供たちは張った氷を割ったり、霜柱を踏んで遊んでいます。生物的な環境作りをねらった活動ですが、学区内に氷が張る場所さえなく、霜を踏むところもない平沼小学校の環境を考えると、気象という自然に親しむ一つの場として役割を果たしているように思えます。
暖かくなって、多くの植物が生え、多様な生き物が集まるようになれば、子供たちの屋上緑地の接し方や見方も変わることでしょう。さらには、自然環境に恵まれない平沼小学校学区でも、少しの工夫で自然が呼び込めることを理解し、自然は身近なところにあることを感じてくれるのではないかと期待しています。
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